夢ねこ★不思議缶

夢ねこ★ 空想・妄想の缶詰は。。。いかが?

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【The sunset in the parallel world】




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【The sunset in the parallel world】


目が 覚めた。

身体が重い。

どうやら昨夜 飲み過ぎたようだ。

枕元の携帯を手にする。

まだ5:30だ。

もうひと眠りしようか。。と思いながら今日の天気予報を見ようとした。

接続不能。

『変だなぁ?。。』

トイレに立ったついでに テレビをつけた。

接続不能。

砂嵐みたいな画面だけが どのチャンネルを回しても現れる。

『マジか?

どうなってるんだ?

また どでかい太陽風のストライクでもあったのかな?』

CDプレイヤーのラジオも 雑音のみ。

なんだか急に 不安がやってきた。

電気は普通に供給されてるから停電じゃないのに。。いったい何があったんだ?

簡単に朝食を済ませて 電車の駅に向かった。

『何だかいつもより道路が混雑してるな。』

駅前には 人が溢れている。

【お客様にご案内申し上げます。コンピューターの不具合により ただいま電車の運行に支障をきたしております。
大変ご迷惑をおかけして申し訳ございませんが 代替のバスをご利用くださいますようお願い申し上げます】


『。。。嘘だろ?いったい何があったんだ!!』

行き先を表示された臨時のバス停を求めて 人が右往左往してる。

心の中で舌打ちしながら ようやく探し当てたバス停は長蛇の列だ。

やれやれと待つこと一時間余り。

すし詰めのバスに揺られて 会社に着く頃には 既にどっと疲れを覚えていた。


会社の正面玄関に 人だかりができている。

『まさか?。』と 不安に急き立てられるように人垣をかき分けて覗き込んで 絶句した。

正面玄関に貼られた貼り紙には。。

【コンピューター及び電話等の不具合により通常業務に重大な支障をきたしています。セキュリティー上の問題もありますので 回復するまで 社員の皆様には自宅待機をお願いいたします】

『おい!!マジかよーーーっ!!』

同僚の顔が見えたので尋ねてみた。

やっぱり彼のところも 今朝から一切の情報伝達機能がシャットダウンされているという。

俺と同じに やっとの思いで辿り着いた奴等が会社の玄関の張り紙を見て 力無く地面に座り込む姿もあちこちで見受けられた。

またあのぎゅうぎゅう詰めのバスに乗るのかと思ったら。。嫌気がさして。。

俺は 自宅に向かってとりあえず歩くことにした。

街は 何だか静かに騒然としている。

いつもニュースを流し続ける ビルの壁面にある巨大スクリーンも沈黙し

今ではどこにでも見られる風景のひとつとなっている 携帯を手にする人々の姿も見られない。

みんなが まるで迷子になったような。。不安そうな瞳の色をしている。

もしこれで電気も使えなくなったらヤバイなと。。

とりあえず食糧を確保しておこうとコンビニに足を踏み入れて 思わず目が点になった。

いつもはぎっしりと食料品で埋め尽くされた棚が  既に殆ど空っぽ状態だ。

店員をつかまえて尋ねたら。。

『何しろ。。電話もメールもFAXも使えない状態ですので。。。
仕入れの連絡を取りたくても取れないんです。 こんどいつ商品が入荷するのか全然わからないんですよ~。』

。。と途方にくれた答えが返ってきた。

ヤバいじゃないか。

俺の部屋の冷蔵庫には 卵とバターとカットサラダ。。それにビールとつまみぐらいしか入ってないぞ。

急に不安が背中を押して

俺は 帰宅途中にあるコンビニを片っ端からチェックして回った。

どこも似たり寄ったりだ。

それでも辛うじて カップ麺やらシリアルなんかを手に入れることができて。。 

俺はそれを抱えて 数時間歩いて よれよれ状態でアパートに帰り着いた。

いったい世の中はどうしちゃったんだ?

まだ電気は通じてるし水も出るから 一応安心な面もあるが。。情報が一切入ってこないっていうのは まるで通信手段の無い絶海の孤島に身を置いているようだ。

これで。。もし水も食糧も手に入らなくなったら?

よしスーパーに買い出しに行こう!!

体はめちゃくちゃ疲れていたが それ以上に。。。もしもこんな状態が何日も続いたら餓死するかも?。。という恐怖に突き動かされて 俺はすぐ行動に移した。

普段はコンビニで その日に食べるものを少しばかり購入する程度だった俺は
まるでいつか写真で見た 終戦直後の買い出しよろしく 学生時代に使っていた大きなリュックサックを引っ張り出して背負うと 
近所のスーパーに向かった。

スーパーは。。ものすごい人で溢れていた。

食料品の棚に店員が商品を補充するそばから 人の手が伸び みるみる空になっていく。

俺も考える余裕など無く 手当たり次第に何でも買い物カゴに突っ込んだ。

長蛇のレジをクリアして重いリュックを背負ってアパートに辿り着いた頃には もう夕方だった。

今日一日中 大きな不安に突き動かされていた。

いったいいつまでこんな状態が続くんだ?

カップ麺をすすりながら。。。暮れゆく夕焼け空を眺めて

『俺たちが当たり前だって思ってる世界の終わりって。。もしかしたらこんな風に突然やってくるのかもな。。。』

ふと呟いた自分の言葉を 納得してるもう一人の自分がいることに 

俺は なんだか不思議な思いがした。



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全て白で統一された その部屋には

これまた 全身白ずくめの二人の男がいた。

《実験はいかがですか?》

若い方の男が尋ねた。

《情報伝達システムに不具合を与えただけで この混乱ぶりは。。どうだ?

いかにこの時代の人間たちが 情報に依存して生きているかがわかって面白い。。

いや。。面白いと言うより。。何だか憐れだね。

昔の人間は 少ない情報の中で必死に考え行動した。

生き抜くための情報は 与えられるものであり また与えるものであった。

自分を取り巻く森羅万象の全てから 情報を得る術を知っていた。

そしてそれを未来に繋げる努力をしていた。

それが 今はどうだ?

何処かの誰かが発した情報を 確かめもせず鵜呑みにして

コントロールされることを良しとする。

世の中は 利便性を突き詰めれば詰めるほど

人は 自分で思考することを蔑ろにしていく。

いざという時の安全弁さえも 大丈夫だろうという妄想の中で取っ払ってしまい

危機が訪れて 右往左往するという具合だ。

経験から学ぶことを忘れ 行き当たりばったりのツギハギでその場をやり過ごしても 後で必ず自分で蒔いた種は刈り取らなければならぬ。

人が人として生きていくために本当に必要なものを思い出すには この実験は良いきっかけになるだろう》

初老の男が画面を見ながら応えた。

《ふーむ。。。

確かに。

ところで これはいつ解除なさいますか?

あまり長期間のシステム障害は やがて時空のパラレル上に歪を生み出す可能性があります。。》

若い男の問いに 初老の男は一瞬躊躇したかのように見えたが。。

《。。もう暫く放っておけ》

そう一言告げると

靴音を高く響かせて その白い部屋を出て行った。



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あれから一ヶ月が過ぎた。

俺の携帯は 部屋の片隅で埃をかぶり テレビはただの四角い箱になった。

ところが不思議なことにラジオだけは しばらくして回復した。

飛行機と電車は運休中。

各国の政府は この通信システム障害の原因を突き止めようと躍起になったが。。

直そうとすればするほど 原因不明のエラーが出てしまい まるきりのお手上げ状態だ。

まるでコンピューターや通信システムが 人間にコントロールされることを拒否しているみたいだと誰かが言っていた。

世界各地で 食料をめぐって一時的に暴動が起こったが それもすぐに沈静化した。

犯罪が増えるかと心配されたが  不思議なことに 落ち着きを取り戻すと 犯罪件数は逆に減り

人と人とが密に連絡を取りあうことで 連帯感や協調性が生まれた。

それまで衰退の陰りを見せていた郵便事業が また再び盛んになった。

バイク便や自転車便などの 配達連絡業者が急激に増えた。

パニックから一転して 世界はゆっくりと緩慢に動き出した。

俺の会社も仕事量が極端に減った。

(もちろん。。給料も減った。)

何しろ取引先の返事を待つのに時間がかかって 次の段階になかなか進めないのだから仕方ない。

今まで忙しさで頭から四六時中湯気を出していた上司が 鼻歌を歌いながらゆっくり書類に目を通している。

俺も クライアントからの希望を時間をかけて吟味できる。

仕事ってこうやって余裕を持ってやった方が 良い仕事ができる気がする。


今までメールや電話で処理していた案件が  実際に担当者と会って話すことで  より確かな手ごたえを感じるようになった。

一時期は大量の失業者が世界中に溢れ 世界経済が破綻したかに思えたが。。

世界中で 新たな静かな動きが 特に若者達を中心に広がっていった。

政府のサポートのもとに 都会を離れ田舎に移住する。 

自給自足の生活。

新たな共同体の誕生。

周りから与えられる一方通行の情報や経験ではなく 自分達で実際に体験したものを相互に分析 発信受信していくというスタイル。

大量生産大量消費という今までのスタイルではなく

人々が本当に必要とするものを ひとつひとつ丁寧に作っていく。

それは生産者と消費者の 互いの顔が見える物作りだ。


。。。この頃 何となく思う。

俺たちは大きなものを無くしたけれど 大切なものを思い出したんじゃないかって。

利便性ばかりを追求して。。【世界は大きく広がった】。。と誰もが思いこんでいたけれど。。 

それは ただの陽炎みたいな幻影を見せられていたんじゃないかって。

人は人と実際に触れ合うことで

あるいは自然とちゃんと向き合うことで その五感を駆使して 経験を積んでいく。

その経験を未来に生きる人にきちんと伝えていくことが 未来に繋がる宝物と言えるんじゃないか。


そんなことを つらつらと考えながら。。。

帰宅途中にある 街を見下ろせる丘の上で 俺はいつものように自転車を止めた。

今日も夕焼けが めちゃくちゃ綺麗だ。

今まで夕焼けの色が毎日違うなんて 全然気づかなかった。

空を見上げる事なんか忘れていた。

帰宅するのは いつもすっかり日が暮れてからだったもんな。

。。。自然の美しさに感動してる時間なんて。。無かったなぁ。。


明日もまた良い天気になりそうだな。

俺は。。 『今日も 素敵な一日をありがとう』。。と心で呟きながら 夕陽に手を合わせた。



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トルルル

トルルルーーー

トルルルーーー


『ん?。。あれ?

もしもし。

はっ。。はい。。はいっ!!

申し訳ありません。

直ぐに伺います。』


疲れを覚えて ちょっとオフィスのソファーで横になるはずが すっかり眠りこけていた彼は

上着と書類を脇に抱えて表に飛び出した。

『いけね!!遅刻だーーー!!』

階段を脱兎のごとく駆け下りて 会社の外に出ると

通りでタクシーを拾って乗り込んだ。

携帯でこの後のアポイントに遅れることを先方に知らせて。。ふーっとため息をついて車のシートに身を沈めた。

『お客さん お仕事お忙しそうですね~。』

タクシーの運転手が話しかけてくる。

『すみません。ちょっと押していて。。

できるだけ急いでくれませんか?』

車の中で書類に目を通しながら。。

彼は ふと顔を上げて ビルの谷間に沈みゆく夕陽に目をやった。

『夕陽か。。。今日も終わりだな』

不確かでおぼろげな記憶の欠片が 一瞬脳裏をかすめ

彼の胸にやわらかな光を ふぅわり。。と落としたが

それが何なのか思い出せぬまま。。。

彼を乗せた車は 夕暮れの都会の喧騒の中に消えていった。



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