夢ねこ★不思議缶

夢ねこ★ 空想・妄想の缶詰は。。。いかが?

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【帰郷・・あなたに帰る】



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【帰郷・・あなたに帰る】



『夏が往くなぁ。。』 

空を見上げて ボクは ぽつりとつぶやいた。


狭いアパートの窓から見える 夏空が

あまりにも 綺麗で透きとおっていたせいなのか

急に何処かに 行きたくなって

ボクは旅行鞄に いろいろなものを 

ぎゅうぎゅう詰めこんで

行く先も ろくに確かめずに

電車に飛び乗った。


かたん かたん かたん

心地よい振動。

ボクは 何処に行くんだろう?


かたん かたん かたん

やさしい響き。

ボクは 何を探しに行くんだろう?


ひゅーん ひゅーーん

現われては 消えていく

車窓から眺める景色。

まるで つくりものみたい。

不思議な感覚。

この電車の中だけが 唯一存在しているみたいだ。

ボクは つくりものの世界に住んでいたのかな?


かたん かたん かたん

ひゅーん ひゅーーん

かたん かたん かたん

ひゅーん ひゅーーん


まるで 揺りかごのような

電車の振動と

子守歌みたいな

やさしい響きに誘われて

ボクは うとうとし始めた。


ふと気づくと 隣に 

髪の長い若い女性が座っていた。

何処かで見かけたような気がするけれど。。

ボク達はお互い 

最初は 知らん顔。


ガタンと 電車が大きく揺れたはずみで

彼女の荷物が 棚から落っこちてきて

ボクの頭に もろにガッツーーーン!!と当たった。


『いてっ!!いててて。。。』

【あらっ!?ごめんなさい!!大丈夫ですか?お怪我はありませんか?】


本当は すごく痛かったけど 彼女のうろたえぶりが可愛かったので

ボクは平静を装った。


『大丈夫。平気 平気!!。。。オレの頭 めっちゃ石頭だから。』

【あら。。本当だゎ!?包みがへこんじゃった。』


ボク達は 笑って意気投合して

そうして 会話が始まった。


ローカル線の車窓から眺める のんびりとした風景に そろそろ退屈し始めていたボク達は

喋って 喋って 喋って
 
そして 喋り疲れて

やがて互いの肩を枕に眠った。


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頬を撫でる 涼しげな風に

ふと目を覚ますと

大きく開いた電車の窓から

彼女が ボクの鞄から荷物をひとつひとつ取り出して

ぽーーん ぽーーーん!!

窓の外に放り投げている。

『お・・おいっ!!

何をするんだ!?

それはボクの大切な荷物だぞ!!』


びっくりして怒るボクに

にっこり笑って 彼女は言った。


【重い荷物なんか 邪魔くさいでしょ?

捨てちゃいなさいよ。

あなた 背負っているものが重過ぎるって 何度もため息ついていたじゃない?

だからわたし 捨てるのを手伝ってあげようと思ったの。】


そう言いながら

またひとつ鞄から荷物を取り出すと

ぽーーーん!!

勢いよく窓の外に 放り出した。


『ちょ・・ちょっと 待ってくれよーー!!

そりゃ重いさ。

重くて

面倒くさくて

たまに どれもこれも めっちゃくちゃ腹が立って

みーーんな 投げ出したくなる。

だけど。。

だけど 今までボクが頑張って背負ってきたものなんだ。

そんなに簡単には捨てられないよ。』


【ふぅーーん。。何だか可笑しいわね?

あれほど 自由になりたい

もう束縛されるのは嫌だって 話していたのに 

いざ捨てるとなると 手放すのが惜しくなるのね。

心の中では 捨てたいと思っていても

実際捨てちゃったら

鞄の中が 空っぽになりそうで 不安なんでしょう?】


『そりゃそうさ。

ボクの鞄の中には ボクの今まで住んでいた世界が そっくり詰まっている。

その世界を全部捨てて

新しい世界になるものを また一から鞄に詰め直すんだぜ。

どんな世界なのか 想像もできないし不安だよ。』


【あぁ。。つまらない。

まるで もう生きることに疲れた老人みたい。

あなたが大切だと思っているものは 全て自分の思い込みでしかないのに。
 
過ぎ去る車窓の景色にばかり気をとられていて

この線路の先に在る まだ見ぬ世界の景色に想いを馳せることができない人なのね。

旅に出るには ちょっと早過ぎたみたい。

ちょうどいいゎ。

もうすぐ乗り換えの駅に着くから

そこで 乗り換えた方がいいゎ。

その路線なら 環状線だから 

ずーーっと同じところを

ぐるぐる回っているから 何の不安も無く 安心して乗っていられるわよ。

ずーーっと ずーーっと 重い荷物を抱えたまま

頭も心も 空っぽで

ぐるぐるぐるぐる ぐーーるぐる。

うふっ♪

今のあなたには それがお似合いかも?】


なんだか侮辱されたみたいで

ボクは思わず 叫んだ。


『冗談じゃない!!

そんな同じ景色を 何度も何度も ずーーっと見ていられるか!!

ボクは新しい景色を見たくて 旅に出たんだ。

新しいボクに出遇いたくて ここにいるんだ。

そうだよ。

キミの言うとおりだよ。

ボクは 臆病で

怖がりで

考えてばかりで なかなか行動に移せない 弱虫だよ。

優しい人だって言われるけど。。

それは 物事をはっきりできない

ボクの弱さでもあるんだ。

だけど。。

このままじゃ嫌だと思ったんだ。

ボクが ボクに失望しないうちに 何かを探すことにしたんだ。

よしっ!!

捨ててやる。

怖くなんかないぞ。

新しいボクに出遇うために この荷物が邪魔だっていうんなら

みんな みんな 捨ててやるーーーっ!!』


思わずボクは鞄に入っていた

それまでボクが 大切にしてきたものたちを

勢いよく窓の外に ぽーーん!!。。と放り投げた。


ボクが捨てたもの達は

バサバサバサーーっと まるで羽が生えた蝶のように風に舞って

あっという間に 過ぎ去る景色の中に消えていった。




鞄は 空っぽ。

ボクも 空っぽ。

何もかも すっきりだ。

あ~ぁ。。

なんて気持ちがいいんだ!!


ボクは何だか可笑しくなって

ひとりで 笑い出した。



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【もう大丈夫。】

『えっ?何が?』

【もう おまえは大丈夫だよ。】


消え去る荷物に気をとられていて 彼女の存在を忘れていた。

その声のする方を振り向くと

いつのまにか彼女の座っていた席に

懐かしい人の姿があった。


『あれっ?かあさん!?何してるんだ こんなところで?』

【まったく。。

あんたは 不器用な子だからね。

あっちも立てよう

こっちも立てよう。。って

いろんなものを抱え過ぎて 

重くて重くて 潰れそうになっているのが

見てて歯がゆくてねぇ。

素直で いい子なのに

真面目で他人を気遣い過ぎる その性格が

却って仇になってしまったのかと。。。気になってね。

だけど もう大丈夫。

あんたは 自分で捨てることができた。

本当の優しさっていうのは 勇気を背負わなくちゃいけないんだって気づいたからね。

人は 人それぞれに いろんなものを その鞄に詰め込んでいるけれど

ぎゅうぎゅう詰めてちゃ 余裕も無くなる。

鞄を空っぽにしなくちゃ

新しい大切なものは 詰められないんだよ。】


そう言って かあさんは ボクの手を握りしめた。 

そのぬくもりは ボクの記憶の中の

たくさんの懐かしいぬくもりを 想い出させた。

 

熱にうなされる 寝苦しい夜 

そっとおでこに添えられた

やさしくて安心する ぬくもり。

ボクの小さかった手が 

いつでもその後を 追いかけた

やさしくてやわらかな ぬくもり。
 
 
都会に出て行く その日に

頑張りなさいよと 差し出された
 
微笑みの影に隠れた
 
寂しさの入り混じった ぬくもり。

大きくなったボクの手が 覚えている  

ボク達を育ててくれた たくましいぬくもり。


そして

いつのまに こんなに小さな手になってしまったんだろう。。と

二度と動かぬその手を 握りながら 

何度も 何度も さすった

かあさんと お別れした朝の

哀しくて冷たい 涙色のぬくもり。



『彼女はかあさん。。だったのか!?』

【あんたが この電車に乗ったから遇えたんだよ。

この電車に乗れるなんて

なんて ラッキーな子なんだろうね~♪

さて。。

そろそろ行かなくちゃ。

ほんとに 幾つになっても面倒ばかりかける子なんだから~。】


そう言って電車が駅に着くと

さっさと 降りていく母を

ボクは 唖然と見送ったまま

電車は 何事も無かったように動き出した。


『かあさん 待って!!

待ってくれよ。

まだ話がしたいんだーー!!』


窓から身を乗り出して ボクは叫んだ。

ホームにぽつんと残り 静かに手を振る母の姿が どんどんどんどん

小さくなっていく。


まだだよ。

行かないでよ。

お願いだよ。

もっと かあさんの ぬくもりを想い出させてよ。

もう一度 ボクの手を握ってよ。


『かあさーーん!!』


自分の声に びっくりしてボクは目を覚ました。

ここはどこだ?

あ。。そうか。

故郷に向かう新幹線の中だった。

お盆の帰省ラッシュのせいか 車内は満席状態で

周囲の乗客の何人かが ボクの方を怪訝そうな顔をして見ている。

隣に座っていた小さな少女が ボクの方を見てクスクスと笑った。

ちょっぴり恥ずかしさを覚えて その少女に向かって ボクは話しかけた。


『あれ?ボク寝言 言ったかなぁ?』

『お兄ちゃん 夢を見ていたの?』

『うん。

懐かしい。。

とても懐かしい人の夢を 見ていたんだ。』

『おかあさん。。って 言ってたよ。』

『はは。。そっかぁ~。

ボクのおかあさんは もうずいぶん前に亡くなっちゃったんだけど。。

久しぶりに田舎に帰るから 今年はお墓参りに行くんだ。』

『わたしは おばあちゃんのお墓参りに行くの。

おばあちゃんの大好きだったマーガレットの花束を いっぱい持っていくんだ。』

『そっか。おばあちゃん きっと喜ぶね。』



かあさんの好きなものは何だったっけ?

紫陽花

カルピス

線香花火・・・


懐かしい記憶を辿りながら

ふと 車窓から過ぎ去る景色を眺めた時に

懐かしいその顔が 往く夏空の雲の向こうで

にっこり微笑んでいたような気がした。


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