夢ねこ★不思議缶

夢ねこ★ 空想・妄想の缶詰は。。。いかが?

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【ここにいるよ】


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【ここにいるよ】


わたしは 一本の木です。

あの子が生まれた記念にと お父さんが

小さな苗木だったわたしを買ってきて 庭に植えたのです。

あの子が すくすくと成長する姿を見ながら

わたしも 大きく大きくなっていきました。



わたしは ただ見ていました。

よちよち歩きのあの子が

まだか細いわたしに 抱きついてきた時に
 
その柔らかくて あたたかな体を支えるくらい

大きな たくましい木になりたいと願ったのです。

だからわたしは

地中深くに 一生懸命根を張って

ぐんぐん ぐんぐん大きくなっていきました。


わたしは ただ見ていました。

かくれんぼ遊びをしているあの子が

見つからないように たくさんの木の葉で隠してあげました。

わたしに登って はしゃぐあの子が

落ちないように せいいっぱい腕に力をこめました。
 


わたしは ただ見ていました。

初めて恋をしたあの子が

わたしの幹に 彼女と自分の名前を刻むのを。

痛かったけれど。。

わたしは その刻印が嬉しかったのです。


わたしはただ 見ていました。

夜が更け。。勉強しているあの子の部屋のライトがいつまでもついて

時どき気分転換に窓を開ける。

その時わたしは

精一杯の 清々しい木の香りを あの子の部屋の窓に向かって送るのでした。


わたしは ただ見ていました。

あの子が家を離れ。。。都会に出て行く後姿を

わたしは ただ ただ 

見ていました。



それから数え切れないくらいの月日が過ぎ。。。

あの子は自分の家族と共に この家に戻ってきました。

家の窓からもれてくる 賑やかな笑い声。

その明るい声を聴くたびに

わたしの心も 明るくなるのでした。


もう大人になったあの子は

わたしのことなど すっかり忘れてしまって

抱きつくことも

かくれんぼ遊びをすることも

木登りすることも

この幹に名前を刻むことも無いでしょう。

それでも わたしは

成長して 家族のために一生懸命働く

あの子の姿が 誇らしく思えて

嬉しくて嬉しくて仕方なかったのです。




『ねぇ。。あなた。

この木は何だか邪魔だから 切ってもいいかしら?

部屋から眺める景色も 枝が邪魔してよく見えないし

ここにあると日当たりが悪くて お洗濯物も乾きにくくなるのよ。』


『ん~。。。この木は亡くなった親父が 俺の誕生記念に植えたものらしいんだが。。

そう言われてみると日当たりも悪くなるし この狭い庭には不向きかも知れんなぁ~。

いいよ。君の好きなようにするといいさ。』


なんということなのでしょう!!

こんなにもあの子のことを想っているのに

もうあの子を見守ってあげることもできなくなるなんて!!

わたしは夜の闇にまぎれて 大声をあげて泣きました。

ザワザワと枝と葉を揺らすわたしに

木の枝で眠っていた鳥たちは びっくりして飛び立ちました。

その夜に わたしが流した大粒の涙を見ていたのは

夜空に輝くお月様だけでした。


そうしてわたしは ただの切り株になりました。


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『暑いわねぇ~。今年の暑さは 何だか格別じゃない?』

『そういえば。。陽射しがやけに強くなったなぁ。』


『日陰が無くなったせいかしら?』

『洗濯物は 早く乾くようになったけど。。今まであの木が 陽射しをやわらげてくれていたのか。。』


秋になり冬が来て 北風がまっすぐに家の窓を叩きます。

わたしにはもう この腕を大きく広げて 北風から家を守ってあげることもできません。

それでもわたしは

ただ 静かにあの子を見ていました。


それからまた 長い長い月日が流れました。

あの子の頭もいつのまにか

白いものが目立つようになりました。

狭い庭には 四季折々の花々が咲き乱れて 

その世話をする老夫婦の笑い声を聴きながら

わたしは ただ静かに 静かに見ていました。


ある春の日に たくさんの人がこの家を訪れて

奥さんの大きな写真を抱えたあの子が

黒塗りの車に乗り込むのを見ました。

それからしばらくの間

あの子は 窓を開けることもなく

家の中は ひっそりと静まり返ったままでした。

わたしは ただ静かに 静かに見ていました。


春が過ぎ夏が来て。。。

ようやくあの子がひとり庭に出て

しばらく放りっぱなしにしていた 花たちの世話を始めました。 

『俺は とうとうひとりぼっちになっちゃったなぁ~。』

ぽつんと そうつぶやいて手を止めたあの子が
 
ふと わたしの方を見ました。


そうして 切り株のわたしに近づくと

わたしの上に腰を下ろしたのです。

そして

わたしを そっと撫でて言いました。

『これ。。確か。。親父が俺の誕生記念に植えたんだっけ?

陽当たりが悪いからって ずいぶん前に切っちゃったんだよな。

おまえは 俺と一緒に育ったようなものなのに。。

親父の想いを切ってしまったな。

ごめんよ。

痛かったろう?

おまえがいなくなって 初めて気づいたよ。

夏の暑さも 冬の冷たい北風の厳しさも

おまえがやわらげてくれていたんだよなぁ~。』


そう言って なんどもなんども

わたしのむき出しになった木肌を やさしく撫でてくれたのです。

懐かしい やさしい やさしいぬくもり。

何年も何年も 長い長い時の流れの中で

どんなにか またこのぬくもりに触れたいと 何度願ったことでしょう。


愛しい 愛しいぬくもり。

でも。。 

わたしを撫でる 愛しいその手は
 
わたしの記憶している 小さな柔らかい手ではなく

家族を守って働いてきた
 
シワシワで ゴツゴツの
 
年輪を思わせる

わたしの木肌と同じような手でありました。


《ようやく出逢えたね。想い出してくれてありがとう。》
 
独りになって

淋しさを知って

ようやくわたしは あの子の想い出の中に 一緒に棲むことを許されたのです。





わたしのたったひとつの小さな恋のお話は これでお終いです。

願わくば 

これを読んでくださったあなたの隣にも

たくさんの【木の物語】がありますように♪



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Merry Christmas♪


わたしは ここにいるよ。

何処にも いかないよ。 

あなたが わたしを忘れない限り 

わたしは いつでもあなたと共に在る。




 

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