夢ねこ★不思議缶

夢ねこ★ 空想・妄想の缶詰は。。。いかが?

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【失楽園】



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Photo:ROM:http://www.rom.on.ca/en/exhibitions-galleries/galleries/world-cultures/sir-christopher-ondaatje-south-asian-gallery



【失楽園】


昔むかしの その昔

まだ大地が 透きとおった水と濃い緑で覆われていた頃のこと。

深い森と それに連なる草原には

いつも暖かな光と やさしい風が吹いていた。 


ある日 高い高い空の彼方から

キラキラ虹色に光る 小さな星の欠片(かけら)が落ちてきた。

星の欠片は 緑に覆われた大地の真ん中にある 大きな樹の根元に落ちて

昼の光の中でさえ キラキラと不思議な虹色の光を放っていた。


最初は遠巻きに怖々と その欠片を見ていた森の鳥や獣達も 

やがて少しずつ そろりそろりとその欠片に近づくと

あまりの不思議な美しさに

我先にと自分のものにしたがった。


それを見た森の神とも呼ばれる大きな樹の主は

誰が一番 それを持つのにふさわしいかと皆に尋ねた。



『ボクが持つのにふさわしいさ。だってボクは一番速く この草原を駆けることができる。』


『いえいえ。。それはワタシ。ワタシの翼なら この地平線の向こうまでひとっ飛び。』


『速く走れたとしても力が無くちゃ意味が無い。オレ様ならこんな大きな岩だって抱えることができる。』


『アタシは力は無いけど すばしこさにかけたら誰もワタシにはかなわないわよ。』


ボクが!!

ワタシが!!

。。と森の獣達は口々に如何に自分が優れているかを自慢した。


すると森の神が言った。


《あぁ。。それぞれに得意なものがあり過ぎて

これではちっとも決まらぬではないか。

そなた達は皆それぞれに 素晴らしいものを持っているのはよくわかった。

しかしこれでは比べようもない。

なるほど。。この星の欠片は不思議な力を秘めておるようじゃ。

見るものの心を捉えて放さなくするようじゃな?

普段は仲の良いそなた達が この欠片に魅入られて

我がものにしようと騒ぎだす。

困ったものじゃ。

それでは こういたすとしよう。

そなた達の中で一番何も持たぬもの。。。

そのものにこれを与えようではないか。

そして これを手にしたものは 争いを避ける為にも

この森を出て行く。。という約束で。

どうやらこの欠片には 不思議な魔力があるようじゃからな。》



その言葉を聴いた途端 いままで騒がしかった森が一瞬静かになり

そして

ザワザワと獣達は顔を見合わせ 囁きだした。


『この森を出て行くだって?』


『今のこの暮らしを捨てて?』


『冗談だろう?確かにあの欠片は欲しいが。。。この森の外の世界は暮らしやすいとは限らないぞ。』


『あの欠片は それほどまでに価値のあるものなのか?』



すると今度は そんなものは要らないというもの達が騒ぎ始めて。。


『アタシは要らないわ。だってこの翼で こんなに自由に空を飛べるんですもの。』


『オレ様だって要らないぞ。この牙も鋭い爪も強いものの象徴さ。力の無いもの達と一緒にしないで欲しいね。』


『ボクだって要らないぞ。この風のような足の速さを持っているだけで充分だよ。』


そう言って獣達は 次々と欠片の傍を離れていった。

やれやれ。。と森の神はため息をついた。

そして とうとう最後に残ったものに樹は声をかけた。


《さてそなたはどうじゃな?

そなたが持っているものを聞かせておくれ。》


『私には。。。

。。私には何もありません。

私には 空を自由に舞う翼も

風のように 草原を駆け抜ける足も

鋭い爪も 牙も力も無い。

ただあるとすれば。。

あんなことをしたい こんなことをしてみたい。。と夢を見ることぐらいでしょうか?』


それを聴いて 森の獣達はいっせいに笑い出した。


『あっはっははは~~!!夢を見るだって!?夢じゃ お腹はいっぱいにはならないわよ~!!』


『夢?夢なんか見てるから。。おまえの足は芋虫みたいにいつものろいんだよ!!』


笑い声が静まるのを待って 森の神が言った。


《ふうむ。。。

なるほど どうやらこれはそなたに与えるのが一番良いようじゃな?

さぁ これをおとり。

そしてこれを持って この森に続く草原の彼方にいるであろう そなたの仲間を探すが良い。

これはきっと そなたにたくさんの【明日の夢】を見せてくれるであろう。

しかしながら

全てのものに光と闇があるように この星の欠片がそなたに与えるものにも光と闇が存在する。

たとえ煌く光に照らされていたとしても 己の足元に在る【陰】の存在を決して忘れてはならぬぞ。

【明日の夢】にも 光と闇があることを心せよ 。》


私は恐る恐る 樹の根元に近寄ると

その虹色に光る星の欠片を そっと拾いあげた。


すると。。。

私の体は 不思議な暖かさと眩しい光に包まれた。


《さらばじゃ。緑の大地の友よ。》


森の神の声が頭の中で響いて 私は眠るように意識を失った。





ぽつーーーん。


『冷たいっ!!』

朝露が 頬に落ちて その冷たさで私は目を覚ました。

どうやらこの大きな樹の下で一夜を明かしたようだ。

なんだか霞がかかったような頭の中。

昨日のことさえ よく思い出せない。

長い長い夢を見ていたような気がする。


起き上がって見上げる空は 朝の陽の光が

雲を黄金色に染めあげている。

色とりどりの小鳥達が 朝の光の中で歌を歌っている。

賑やかな歌だなぁ。

なんと歌っているのだろう?

遥か昔に聴いたような気がするが。。思い出せない。


大きな樹だなぁ。

まるで この森の主のような風格がある。

不思議だな?

なんだか とてもとても懐かしい気がする。


私は誘われるように その大きな樹をそっと抱きしめると

『ありがとう』と呟いた。


そして 朝焼けに染まる東の地平線目ざして歩き始めた。




こうして人は

【智慧】という明日の夢を手に入れる代わりに

森と草原の言葉を失くし

緑の大地と そこに棲む獣達と別たれた。




DSC00145_convert_20091123045333.jpg





だから 今でも人は

ふいに

訳もなく 懐かしくなるのだ。

ふいに

訳もなく 還りたくなるのだ。



遥か 遥か 彼方の

時の地平線の向こう。


その 時の地平線の彼方にある楽園は


暮れゆく空の 茜色の下

寄せては返す 波の生まれるところ

霧深い森の 緑に覆われた帳(とばり)の奥深くにあって


《還っておいで かえっておいで》。。。と

人の魂の記憶の琴線をかき鳴らす。


その音が響くと

人は

人が失くしてしまった 遥か古(いにしえ)の言葉の欠片を探しに

訳もなく 旅立ちたくなるのだ。



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